2015年04月の日記 |
2015年4月23日(木)
「日記の更新を希望します」という声が過去最高の3人(笑)から聞こえてきたのであるが、生きた心地のしない毎日が5月20日頃まで続くのでどうにもままならない。今年は大学の春休み中もずっと取材や原稿に追われ、日帰り旅行すら行けずに終わった。さらに調べてみると、峰山には2月11日、日本書紀と古事記による日本初代神武天皇即位の日以来登っていない(ま、建国記念の日ですが)。10年近く前に捻挫で3ヵ月休んだ時に次ぐ、史上2番目に長いブランクである。
そういうわけで、しかし更新もしないといけないということで、とりあえず今日は、先週の授業の余談でやったことを垂れ流してお茶を濁すことにします(笑)。
去年から新たに「さぬき文化論」という科目を担当することになったのである。「することになった」と書いたが、私の中では「させられることになった」という印象である(すみません)。この科目は10年近く前に前任の担当教員が辞めた後、同じ学科の下っ端であった私に「後任が決まるまで中継ぎでやってくれ」という要請があって2〜3年やったことがあるのだが、その後、大学のカリキュラムの制度が変わって5年ほど私の手を離れていた(誰か別の人がやっていたのだと思うが)。それがまた、何かの理由で「やってくれ」と言われて舞い戻ってきたのである。「中継ぎ」なんて、方便である(笑)。一旦やったら、もう既成事実として「担当」になってしまう。意見を出したら、出したやつがやらされるハメになる。マーフィーの法則を忘れていた(笑)。
さて、その「さぬき文化論」の第1回目の授業は、いつものように本編に入る前のオリエンテーション的な話から入りました。
***
田尾 「さぬき文化論」だから、まあ最初に香川の基本情報ぐらいは押さえておこうね。香川県の人口は今、大体何人くらいだ?
会場…でなくて教室内は、初めての授業だから当然無言。しかし私がわざと黙って答を待っていると、顔なじみの学生が気を遣って恐る恐る「100万人」と声を出した。ええやつやなあ(笑)。
田尾 はい100万人。正確には約98万人。「約」をつけて「正確には」いうのもおかしいけどな。さて、「香川の人口は98万人です」というのを聞いて、あるいは覚えて、何が言える?
ここで再び客…でなくて学生の反応を待つ。「何が言える?」という問いの意味を考えているように見えて何も考えていない学生が92%いるが(残りの8%は消費税)、まあ10秒ほど待ってやって、
田尾 何も言えんだろうが。俺にもこれだけでは何も言えん。ええか? 数字というものは単独で1つ出てきても、何のメッセージもないんや。これを分析して初めて、いろんなメッセージが出てくる。分析されてない状態の数字は、ただの小麦粉を練ったダンゴだと思え。そのまま食えんだろ? しかも、そのダンゴの熟成状態もわからんし、これがうどんになるのかパンになるのかすらわからん。ま、例えの意味もよくわからんが。じゃあ行くぞ。今年の3月時点で発表されている人口を、まず市町別に分けてみる。
香川県…… 978999
・小豆島町…… 15054 ・土庄町……… 14037 ・直島町……… 3150 ・東かがわ市… 31345 ・さぬき市…… 50436 ・三木町……… 27975 ・高松市………420816 ・坂出市……… 53244 ・宇多津町…… 18883 ・丸亀市………110389 ・綾川町……… 23698 ・多度津町…… 22914 ・善通寺市…… 32859 ・琴平町……… 9294 ・まんのう町… 18394 ・三豊市……… 65846 ・観音寺市…… 60665
田尾 香川県の東から並べてみると、こうなる。何が言える? まだほとんど何も言えんだろ? じゃあ次、これを市町に分けて多い順に並べ替えてみる。
・高松市………420816 ・丸亀市………110389 ・三豊市……… 65846 ・観音寺市…… 60665 ・坂出市……… 53244 ・さぬき市…… 50436 ・東かがわ市… 31345 ・善通寺市…… 32859
・三木町……… 27975 ・綾川町……… 23698 ・多度津町…… 22914 ・まんのう町… 18394 ・宇多津町…… 18883 ・小豆島町…… 15054 ・土庄町……… 14037 ・琴平町……… 9294 ・直島町……… 3150
田尾 ちょっとメッセージが出て来たの。どこが多いとか、どこが少ないとかいうメッセージがわかりやすくなってきたやろ。しかし、これはまだ「知っています」という「知識」の段階や。「何が言えるか?」「何が起こっているのか?」「ではどうすればいいのか?」と考えて戦略を立てるためには、この程度に数字を「分解」しただけではあまり役に立たない。
そこで次に、ちょっと「推移」という情報加工をしてみる。平成19年と平成27年の人口の比較。何で19年のデータと比較するかというと、19年に香川の市町合併が一応終わって今の8市9町の形になったからね。
(平成19年) (平成27年) ・香川県…… 1009298 → 978999 ー30299(97.0%)
・高松市………418742 → 420816 +2074(100.5%) ・丸亀市………110191 → 110389 + 198(100.2%) ・三豊市……… 70700 → 65846 ー4854( 93.1%) ・観音寺市…… 64454 → 60665 ー3789( 94.1%) ・坂出市……… 56769 → 53244 ー3525( 93.8%) ・さぬき市…… 55210 → 50436 ー4774( 91.4%) ・東かがわ市… 35391 → 31345 ー4046( 88.6%) ・善通寺市…… 35366 → 32859 ー2507( 92.9%)
・三木町……… 28779 → 27975 ー 804( 97.2%) ・綾川町……… 25480 → 23698 ー1782( 93.0%) ・多度津町…… 23689 → 22914 ー 775( 96.7%) ・まんのう町… 19671 → 18394 ー1277( 93.5%) ・宇多津町…… 17783 → 18883 +1100(106.2%) ・小豆島町…… 16924 → 15054 ー1870( 88.9%) ・土庄町……… 16069 → 14037 ー2032( 87.4%) ・琴平町……… 10562 → 9294 ー1268( 88.0%) ・直島町……… 3518 → 3150 ー 368( 89.5%)
田尾 ほら、何事が起こっているかがだんだん見えてきたやろ。さらにこれを、減少率の小さい順に並べ替えてみると、
・香川県………( 97.0%)
・宇多津町……(106.2%) ・高松市………(100.5%) ・丸亀市………(100.2%) ・三木町………( 97.2%) ・多度津町……( 96.7%) ・観音寺市……( 94.1%) ・坂出市………( 93.8%) ・まんのう町…( 93.5%) ・三豊市………( 93.1%) ・綾川町………( 93.0%) ・善通寺市……( 92.9%) ・さぬき市……( 91.4%) ・直島町………( 89.5%) ・小豆島町……( 88.9%) ・東かがわ市…( 88.6%) ・琴平町………( 88.0%) ・土庄町………( 87.4%)
田尾 こういうふうに情報の見せ方を加工すると、最初の「何が言える?」の質問に答えられるようになる。例えば、香川県全体がこの8年間で97%に減っているのに、宇多津と高松と丸亀は増えている。つまり、「全体が増えた、減った」というのは全体を構成する各部分が「一律に増えた、一律に減った」ではなく、各部分は増えたり減ったりしていて、その合計が全体の増減であることがわかる。
あるいは、「増えているのは東は高松、西は丸亀・宇多津(隣接している)」であるが、これは典型的な「過疎が進んでいく時のパターン」であることがわかる。過疎化していく時は、まず郡部から「こんな田舎じゃ仕事もないし生活できない」といって人が出て行くが、その出て行く人は2種類に分かれる。一つは、東京とか大阪とかの県外の大都市に行くパターン。もう一つは、「仕事がないから出て行くけど、県外にまで行くのはどうも…」という人が県内の都市部に行くパターン。従って、過疎化が進んでいく時には、一旦、「そのエリアの中の中心市町が、郡部から人口を吸い上げる」という現象が起きる。
だからもし、高松や丸亀が「この人口減少時代にありながら、我が市は人口が増えている」と胸を張っているなら、「それはただの過疎化のパターンにはまっているだけですよ」と突っ込んであげられる(笑)。もし暇なら、市町別のこの8年間の出生率の推移とか人口に関する他のデータを被せてみ? たぶん、この人口の増減率とあまり連動してないことがわかるぞ。
さらにあるいは、小豆島や直島が激しく人口が減ってきているのがわかるね。すると、今まで島に対してやってきた数々の優遇政策やイベント等は、人口増にはまるで効果がなかったことがわかる。すると、島の人口減少食い止め策は、根本的に今までのやり方を改めないといけない、という話になる。
まあそういうことだ。とにかく、加工されていない数字を覚えても、それは「クイズ大会で1ポイントとれる」くらいの意味しかないと思っておけばいい。小学校と中学校はそんな覚えるところで基礎をたたき込んでもええけど、高校と大学は最低限「そこから何が言えるか?」のレベルでものを考えないかん。で、社会に出たら「ではどうすればいいか?」を考えないと、ビジネスマンとしてはまるで役に立たんぞ。
***
みたいなイントロで、今年も頑張って授業をしています。ちょっと原稿に行き詰まってきたので、日記で手遊びをしてみました。明日はオープンキャンパスでずーっと係、明後日はインタレストの無人島ロケと撮影の残りと原稿。ゴールデンウィークも1日も休めません。
|
2015年4月19日(日)
インタレストの締切が近いというのに、まだ第一特集の撮影が3分の1ほども残っているという大ピンチである。そのうちの1件、訳あってどうしてもある無人島に渡らなければならないのだが、これがどうにもスケジュールと天気がうまくかみ合わなくて、なかなか撮影ができない。
まず、4月7日(火)に私と担当の吉本ラミレス、藤原、そして島まで船を出してくれる海上タクシーのおじさんの日程が合ったので、1週間ほど前から撮影決行の予定を組んでいたところ、当日の朝、雨に祟られて中止を決定。で、天気予報によると水曜日から晴れるとあったので、海上タクシーに「次は4月15日(水)にお願いします」という予約をした。
そしたら、4月11日だったか12日だったか、海上タクシーのおじさんから「4月15日は風が強くて波が高いから、やめた方がいい」という連絡が入りました。私は「いやいや、そんな先の波の高さなんかわからんやろ。なるべく早めに撮影を終えたいから、ギリギリまで判断を待ちましょう」という気持ちだったのだが、電話を受けた藤原がその場で「わかりました」と返事をしてしまっていたので、私は「まあええか、4月中に撮影できれば何とかなる」と引き下がった。
そして4月15日(水)の朝。空を見ると久しぶりに晴れ間が広がっていたのであるが、風力全開! 海上波高し! 小舟は危険! 海上タクシーのおじさん、すごいわ。
で、次の予約が今日、4月19日(日)だった。何で飛び飛びの予約かというと、新学期の授業が始まっているため、土日の用事が入っていない時と、平日は水曜日の「インタレストデー」しか使えないからである。
ところが、前日の18日(土)の時点で、翌19日(日)の天気予報はテレビを見ても新聞を見てもネットを見ても全部「雨」になっているではないか。ま、テレビも新聞もネットも情報源が気象庁とかウェザーニューズとか同じようなものだから、どこも同じような天気予報が流されているわけですが。それで情報自体に差別化要素がないので、「見せ方」で、若いおねえちゃんを使ったり、過剰なディスプレイをしたり、余計な情報をくっつけたり(「折りたたみ傘を持って行け」とか、最近は着ていく服までアドバイスしてくれているらしいし・失笑)するしかないと思っているのでしょう。でも、そんなことないですよ。たまには外国の天気予報のやり方を学習したらどうですか? アメリカもヨーロッパも、すごく大人の、視聴者がちゃんと自分で考えられるような天気予報ですよ。
けどまあとにかく、どこからどう見ても「明日は雨」、しかも「夜にかけてどんどん悪くなる」という予報だったのである。でも、こないだは3日も前から風が吹くと言って中止を連絡してきた海上タクシーのおじさんから、今回は何の音沙汰もない。私は「とりあえず明日の朝まで待ってみよう」と思って、土曜日の時点では判断を保留することにした。
日曜の朝、5時半に起きて外を見ると、雨が降っていました。でも、小降りでほとんど止みかけている。5時47分、藤原から電話がかかってきた。
藤原「どうしましょう」 田尾「そっち(高瀬)は降っとんか」 藤原「雨は止んでますけど、道路はすっかり濡れてます」 田尾「あかんか。天気予報がこれから悪くなるって言いよったし、仮に止んでも、どんよりしとったらちゃんとした写真撮れんしな。どうせなら天気のええ日に行こう」 藤原「わかりました」 田尾「ほな、海上タクシーのおじさんには俺が電話しとくわ」
というわけで、朝7時28分、私は海上タクシーのおじさんに「すみません、天気が悪いのでまた中止にしようと思うんですが…」と言ったのである。ところが、
おじ「そうですか、あ、別にいいですよ。けど今日は大丈夫だと思うんですけどねえ」 田尾「何か、天気予報は全部、これからどんどん悪くなる言うてるんで」 おじ「そうですか。まあ、島に渡るのはちょうど昼頃なんで、その頃は大丈夫だと思うんですが、構いませんよ。また天気のいい日に予約して下さい」
何か、おじさんの言葉の端々に、何度も「大丈夫ですよ」というセリフが出てくるのである。それがすごく気にはなったのだが、私には何とも判断できない。そこで、「今日をボツにしたら予定が3回も延期になるので、おじさんは何とか今日行きたいのかなあ。まあ、あと2週間ぐらいの間にはどこかで晴れの日に当たるだろう」と自分に言い聞かせて、今日はボツにしました。
そしたら、昼の12時頃、もし行ったらちょうど島に渡ってた頃、雲が薄くなったかと思うと、うわ! 日が差してきた!
私はこれから、タイトな天気の確認が必要になったら、テレビや新聞やネットの天気予報をあてにせずに、あのおじさんに聞くことにしよう(笑)。
天気予報の世界はものすごい技術や設備が進歩して、すごいたくさんのデータが蓄積されていると伺っていますが、何か、天気予報界の「事件は現場で起こっているんだ!」を見たような気がしました。情報収集と分析をしている方々は大変でしょうが、発想の転換も常にお忘れなく。マスコミの方々には、「バッグに折りたたみの傘を入れておくことをお勧めします♡」とか「今日はカーディガンを一枚羽織った方がいいと思いますよ♡」とかいうアホなアドバイス(失礼)をするのもいいですけど、少し真面目に天気予報報道の差別化を図ることをお勧めします。(最近立て続けに天気に翻弄されているおっさんより)
|
2015年4月16日(木)
創刊以来最大の忙しさである。何の創刊以来なのかと問われると「『タウン情報かがわ』創刊以来」と答えるしかないのだが、授業が始まり、インタレストの締切が始まり、いつもの重い原稿が継続している上に、新たなビッグプロジェクトの作業が第一の大きな山を登っている最中である。
この1週間、アリクイの這い出る隙間もないくらいの仕事漬けであるから、こないだ、ずっと雨続きだったのがようやく晴れたのでちょっと這い出て、ガソリンスタンドに行ったのである。そこで給油と洗車を頼んで休憩室でパソコンを開けて仕事をしていたら、晴天にわかにかき曇り、「洗車中に雨が降ってくる」という目が点になるような惨事に見舞われました。ま、「忙しい時に這い出るな」っちゅうことですか。
さて、そろそろ松本君にインタレストの締切の段取りの確認をせないかん。今年もゴールデンウィークを全部使って地獄の追い込み作業をせないかんこと、確定である。
|
2015年4月8日(水)
県議選の投票日の4日前だというのに、とても静かで仕事がはかどっています。なぜ静かかというと、高松市の選挙区は無投票になったため、うるさい選挙カーが一台も走ってないからです(笑)。
何でも、県庁所在地の選挙区で無投票になるのは全国的にも稀だそうで、四国新聞ではお決まりの「無投票はいかがなものか」という批判的な記事が載っていたが、冷静に考えてみると、それって誰を批判しているのかよくわからない…ということに気づきませんか?
「無投票はいかがなものか」と言うのであれば、原因は「立候補者が少なかった」ということにあるのだから、「立候補しなかった人に責任がある」という話になります。すると、「無投票はいかがなものか」という主張は、立候補しなかった高松市民を非難していることになるわけですが、その当然の因果関係をきちんと押さえたマスコミ記事は、私は今まで見たことがありません。だから、私は無投票になった選挙を批判する記事を見るたびに、「だからどうしろと言っているんだ」というツッコミを入れているんですが(笑)。
こういうのも、私の口癖である「目的と手段の整合性」という原理原則が頭にない、という典型例だと思います。もし、「無投票はいかがなものか」と思うのであれば、「目的」と「目的を達成するための最も有効な手段」の関係は、
(目的)無投票を避ける (手段)定数以上の立候補者を立てる
という、実にシンプルな話になります。じゃあ、「定数以上の候補者を立てるためには、どうすればいいか?」と考えればいい。その方法にはいろんな案や意見があると思いますから、みんなでそれを出し合って議論すればいいし、新聞はそこに対する提案や主張をどんどんするべきだと思うのですが。
とにかく、議論をそこに持って行かない限り、いつまで経っても「ふたを開けてみれば無投票になった」、「ふたを開けてみれば選挙戦になった」という、サイコロ振るみたいな同じことが起こり続けますよ。ちなみに、私には「立候補者を増やす方法」のかなり有力で画期的な提案が1つありますが、意見を整理して書くのに2時間ぐらいかかりそうなので書かない。
ただし、「無投票を避ける」というのは、地域を発展させるためには大して意味のない、小さなイシューだと私は思っています。「県議会とは何のためにあり、何を達成すべき存在なのか?」という、根本的な原理原則から考えれば、
(目的)優秀な県会議員を揃える
というのが一番大きなイシューでしょう。すると、「それを達成するために有効な手段は何か?」と考えれば、今の選挙報道がいかに「ただのイベント報道」に過ぎないかが露呈すると思います。みんなでその「手段」を考えましょうよ。そして、マスコミはその議論を行政や政治家や県民、市民に提示し、自らも提案し、何かを動かしてくださいよ。それこそ、地域の発展を牽引するマスメディアの力の見せ所だと思うのですが。
というわけで、インタレストが締切モードに入ってきました。他の仕事はずいぶん進んだけど、引き続き、生きた心地のしない日々があと1ヵ月少々。
|
団長日記・バックナンバー一覧へ |
build by HL-imgdiary Ver.1.24
|