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2016年04月の日記
2016年4月29日(金)

 通常の仕事の上に『インタレスト』の締切が乗っかって喘いでいる最中のプチ気分転換に、いろんなデータの並べ替えの手遊びをちょっと。データというものは面倒くさそうだけど、基本的には単純な連続作業だから、発想力を駆使したりロジックをこねくり回したりする苦悩がないので、私には結構な「机上の気分転換」になるのである。というわけで、今日は数字を大量に並べてチンペイを懲らしめてやろう(笑)。

 まあ、今さら10年も前のデータを並べてもあんまり意味がないが、国の統計データから2001年から2007年までの都道府県別GDPの推移を引っ張り出して、その増減率を計算してみました。同資料によると、2007年というのは過去15年ぐらいの中で都道府県GDPの合計が一番多かった年で、そのあと2008年にリーマンショックが来てGDPが落ち込んで、今は回復しながらもまだ2007年実績には届いてないという状況のようです。

 では、2001年と2007年のGDP(単位億円)を比較した増減率ランキング。

順 都道府県  2001年   2007年  増減率
1 三重県   69931   82024  117.3%
2 愛知県  332276  374691  112.8%
3 広島県  109603  120740  110.2%
4 栃木県   80157   83653  107.7%
5 静岡県  161436  172695  107.0%
6 京都府   96910  103164  106.5%
7 茨城県  113043  120382  106.5%
8 神奈川県 306153  325423  106.3%
9 滋賀県   58346   61896  106.1%
10 東京都  952515  999315  104.9%
11 千葉県  193491  202810  104.8%
12 埼玉県  202646  212350  104.8%
13 山口県   58043   60528  104.3%
14 岡山県   75942   78982  104.0%
15 福岡県  177264  184203  103.9%
16 群馬県   77389   79916  103.3%
17 佐賀県   29046   29929  103.0%
(全県平均) 5213974  5362304  102.8% 
18 山形県   40443   41055  102.7%
19 山梨県   32517   33004  101.5%
20 岐阜県   76240   76946  100.9%
21 沖縄県   36997   37281  100.8%
22 宮崎県   35525   35768  100.7%
23 青森県   46673   46965  100.6%
24 富山県   47591   47611  100.0%
25 鹿児島県  57173   57189  100.0%
26 福井県   34693   34676  100.0%
27 和歌山県  36364   36207   99.6%
28 大阪府  403257  400240   99.3%
29 福島県   79696   78965   99.1%
30 大分県   44541   44104   99.0%
31 熊本県   58468   57846   98.9%
32 長崎県   45333   44547   98.3%
33 徳島県   29090   28520   98.0%
34 香川県   39334   38506   97.9%
35 新潟県   94402   91902   97.4%
36 兵庫県  200353  194604   97.1%
37 長野県   86017   83405   97.0%
38 石川県   49734   47942   96.4%
39 愛媛県   53236   50933   95.7%
40 奈良県   39462   37707   95.6%
41 岩手県   47572   45135   94.9%
42 宮城県   88223   83138   94.2%
43 秋田県   39681   37249   93.9%
44 島根県   26627   24985   93.8%
45 北海道  202812  190045   93.7%
46 鳥取県   22002   20269   92.1%
47 高知県   25729   22859   88.8%

 これを眺めながら、言えることをいろいろ探してみましょう。GDPデータというすごく事務的な数字だけの話だから、左翼の方々が好きな「GDPだけが豊かさの指標じゃない」とか「幸福度は数字で表せるものではない」等々の誰でも言える、何でも言える情緒的な話は全部無視しますよ(笑)。

(1)上位を見れば一目瞭然、GDP的には、あの10年近く(おそらく今も)起こっていたのは「東京一極集中」ではなくて、「三重・愛知・広島・栃木・静岡・京都・茨城・神奈川・滋賀あたりボワーッと集中」のようである。
(2)全県平均が真ん中より上の方にあるということは、やっぱり何らかの「いくつかのエリアに集中」の動きが起こっているようである。
(3)経済規模の大きい都道府県(GDP10兆円以上)で伸び率が高いのは、愛知、広島、静岡、茨城、神奈川がトップ5。落ち込み率が大きいのは北海道、兵庫、大阪がワースト3。
(4)日本で経済規模が小さい都道府県のツートップは鳥取と高知であるが、この2県は落ち込み率もツートップ。

……と書いたところでふと思って確認してみたら、この2001年〜2007年の落ち込みツートップ県の県知事は、鳥取がずーっと片山善博知事、高知がずーっと橋本大二郎知事でした。こないだ、舛添東京都知事が公用車で別荘に行っていたことが話題になった時に、片山さんと橋本さんがテレビで「許されることではない、私はそんなことはやってなかった」と舛添さんをだいぶ非難されていましたが、知事の一番の責務が「担当地域を豊かにすること(情緒的ですが・笑)」だとしたら、「自分の地域を転落させたワースト2のお二人が、曲がりなりにも地域の豊かさを維持しているよそのトップを最優先責務以外のことで非難する」という、ちょっとかっこ悪い話になるのですが(笑)。

 まあ、舛添さんも東京都を豊かにしているのかどうか、まだ数字がはっきり出てないのでわかりませんし、お二人も昔の話でもうなかったことになって、今は「ご意見番」という別の仕事をされているのでどうでもいい話なのかもしれませんが。

 ちなみに、会社のトップの一番のミッションは「業績を上げて株主(会社に出資している人)に利益を還元し、併せて社員も豊かにすること」ですが、知事の一番のミッションって、「地域を豊かにして住民(税金を拠出している住民は地域の「社員」じゃなくて「株主」に該当すると思いますが)に利益を還元し、併せて公務員(これが地域を現場で運営するスタッフである「社員」だと思う)も豊かにすること」ではないんですか? まあ、「それは違う」という意見もあるのでしょうが、違うのなら、行政トップの一番のミッションは何なんだろう…

 というあたりで本日の手遊びを終了して、また働くことにします。私の一番のミッションは「しっかり持ち場に着け」なので。
2016年4月24日(日)

 こないだumieでいつものようにパソコンを持ち込んで原稿に没頭していたら、店内に薄く流れている、いつもは全く気にならないBGMが、急に耳に飛び込んできた。一瞬、何事が起こっているのか理解できんかったがな。

 「私が好きな高田渡おじさん(ま、昔はおじさんじゃなかったんだけど)の歌でカラオケで歌ったことのある歌」は、『生活の柄』と『銭がなけりゃ』と『値上げ』の3曲であるが、今流れている曲は、どう聴いても高田渡の『生活の柄』ではないか。しかも、若い女の子の声じゃないか。何がどうなってるんだ?!

 だいたい、高田渡おじさんの歌がこんな公の場(笑)で流れているのを今まで聴いたことがないし、そんな高田渡の歌を今頃、しかもタカダワタル的世界と対極にあると思われる女の子がカバーするとはにわかに信じがたかったので、一瞬、何事が起こっているのか理解できなかったのである。

 で、聴いていると、やっぱり若い女の子では高田渡の「言葉」を「音」としてしか表現できていない感じがしたけど(まあ、豊かな時代の若い女の子には無理だろうけど)、それでもたぶんあの歌を「いいなあ」と思ってカバーしたんだろうことに、「へえー、今時そんな子がちゃんといるんだ」と思ったわけです。

 そしたら今、「ガリガリ君」の値上げのテレビCMのBGMに高田渡の『値上げ』が使われていて、そのCMのデキがとてもいいと評判になっているというではありませんか。こっちは選曲したのはおそらくそれなりのおじさんに違いないと思うのだが、どうしたんですか? 高田渡、今頃何か来てるんですか?(笑)

 ちなみに、おじさんになった高田渡に絡ませたら一番おもしろいのは、なぎらけんいちと坂崎幸之助です。花紀京と岡八郎の絡みぐらいおもしろいですが、例えがマニアックすぎて一部にしか伝わらないと思います。

 通常の仕事の上に『インタレスト』の締切が乗っかってきて大変なのに、キャッチアコールドになってしまいました。もういつ以来か記憶にない、栄養剤を飲んで寝たきりの日曜日。昼過ぎまで、野村敏京がトップを走っているアメリカの女子ゴルフと、ボクシングのローマン・ゴンサレスの世界戦、「GGG」こと“グレート”ゲンナディ・ゴロフキンの世界戦の生中継を見ていました。以上、体調不良につき、ぬるい日記で失礼。
2016年4月19日(火)

 いろんな仕事がいっぱい進んだのに、『インタレスト』の締切シーズンが到来しました。文化人講座の「英文怪訳」の名作、She isn't liar.(シーズン到来や)です。

 さて、この忙しい時に団員Dから「何があったんですか」というメールがあった上に、清水屋や上戸の大将とかの間でも「まさか団長が…」というプチ騒動になっているらしいので、公式に説明しとかないかん。

 香川県のタウン誌『ナイスタウン』の5月号(20日発売)に、私のインタビュー記事が載ることになってまして(笑)、しかも表紙にまで私の写真が載っているらしい(まだ見てないけど)。『ナイスタウン』といえば、かつて私が編集長〜社長を務めていた『タウン情報かがわ(のちのTJ-Kagawa)』のライバル誌で、1982年に『ナイスタウン』に5年遅れて『タウン情報かがわ』を創刊した私は、TJを辞めることになるまで21年間、ずーっとお互いに競争しながら香川の若者文化の活性化に努めてきた…という間柄である。

 その私が『ナイスタウン』に出るということは、例えるなら自民党総裁が『赤旗』に出たみたいな…いや、違うな(笑)。自民党と共産党はライバルほどの均衡勢力じゃないし、自民党は健在だけど『タウン情報かがわ』は事実上消滅してるし。何かな、例えるとしたら、マルナカの社長がマルナカを辞めたらマルナカが潰れて、ほとぼりが冷めた頃にマルヨシの広報誌にインタビュー記事で載ったみたいな…いや、マルナカも健在ですからそんなことはないですよ(笑)。えーと、何かまあ、表面的にはそんなイメージに見えるような話ですわ。で、そういう経緯を知っている一部の私の旧知の方々が「田尾さんが『ナイスタウン』に出るらしい」という情報を早々に入手して、「一体何があったんだ」という反応があったというわけです。

*****

 さてと。ある日のこと、『ナイスタウン』の営業のエライ人になった浪切さん(会ったら「浪切」と呼び捨てにしている仲ですが・笑)から15年以上ぶりに連絡がありました。聞くと、「今度、『ナイスタウン』でうどん特集をやるんですが、例えば教授にインタビューさせていただくというのは可能でしょうか…。いろいろあって難しいとは思いますが…」と、ものすごく恐る恐る(笑)打診してきたのです。

 浪切と…いや、浪切さん(笑)とは私がタウン情報の現役の頃、何度か会っていろいろタウン誌ビジネスの将来などの話をしたことがあるという間柄ではあるのですが、何しろライバル誌だったし、あれから15年以上も会ってないから彼もいろいろ気を遣っていたに違いない。そこで私は返事をしました。

田尾「ええよ(笑)」
浪切「いいんですか!」

 まあ、即答した理由はいくつかありまして、

(1)もう私はタウン誌的にはフリーだし、『TJ-Kagawa』もなくなったから、私の仲ではかつてのライバル関係などは全く存在しない。
(2)讃岐うどん巡りブームはその根幹が「若者文化」であるが、ちゃんと若者文化の視点でこれからの「讃岐うどんテーマパーク・香川」の情報発信をしていく媒体は、今や県内には『ナイスタウン』と『こまち』しかない。でも、両誌の今の讃岐うどんに関する情報発信は、ただのお店紹介の域を出ていないので、私は両誌に何とか頑張って次世代のメッセージ性を持ったプロモーションをしてほしいと思っている。
(3)これは勝手な想像で失礼ではございますが、もし万が一、『ナイスタウン』のうどん特集の企画会議で若いスタッフから「田尾さんに出てもらったら?」という話が出て、「けどTJの人やったから無理やろ」となった時に、もうええおっさんになった浪切が「私が頼んでみようか?」という話になったのだとしたら、ここは若いスタッフに対する浪切の顔を立てるためにも受けてやらなければならない(笑)。

 どうよD々君、清水さん、上戸君、これは受けてやらないかんやろが(笑)。

*****

 そういうわけで3月末のある日、インタビュー取材を受けに『ナイスタウン』編集部へ初めて行ってきました。夜だったのでスタッフの方々はほとんどいませんでしたが、浪切と担当の編集の女性とライターの女性とカメラマンの方がいて、小一時間ほどインタビューを受けて、写真を撮られて、それからちょっとだけ、編集のレクチャーまでしてきました。

田尾「例えばこれ見てみ? この店の一番の差別化された付加価値は何や?」
編集「……」
田尾「このメニューの、特にこれやろ? じゃあ、これと一緒に何でこの写真を載せるんや。一番の付加価値をぼかしてしまうだろ」
編集「……」
田尾「次行くぞ。この店に付いとるこの見出しを、こっちの店の見出しに持って行ってみ? そのまま使えるだろ。ということは、この見出しはこの店ならではの付加価値を全く表してないということや。こういう細かい話は、読者にはすぐにはわからんことや。けど、こういう細かいところまでポリシーを持って作り込んでいく。その積み重ねが、本全体のパワーをじわーっと生み出していくんや。本日は以上(笑)」

 もうとても若者文化を扱えるような歳ではなくなったおっさんの余計な戯言を申し上げまして、どうもすみませんでした。ただし、こんなおっさんを載せたせいで部数が落ちたら、それは『ナイスタウン』の掲載責任だ(笑)。

 という経緯であった。内輪話だけど、浪切だから許してくれるはずだ。いや、許してね(笑)。無用の憶測が飛び交うのもヤなので。

*****

 でも正直、地元タウン誌には讃岐うどん巡りブームの「第三世代のプロモーション」をぜひやってほしいと思っているのである。当初は試行錯誤になるとは思うが、その辺の感覚を掴めるのは、やっぱり若者文化の最前線で情報発信をしている者が一番だからである。

 私の認識を申し上げれば、

(1)第一世代…1990年代。今日の讃岐うどん巡りブームを築いた怪しい製麺所型の超人気うどん店カテゴリーの数十軒。キーワードは「圧倒的に差別化されたシチュエーション」。
(2)第二世代…1990年代終盤〜2000年代。讃岐うどん巡りブームを継続させた、若手〜中堅の一般店、職人型製麺所風店、多店舗展開で新しいビジネスモデルを実践し始めた店など。キーワードは「ハイレベルの麺、ダシ、メニュー、システム」。
(3)第三世代…2010年代。10年後、20年後の「讃岐うどんテーマパーク」のニューアトラクションを担う、新しいコンセプトの窺える店。キーワードは「新しいスタイル、新しいセンス」。

 というイメージである。で、第二世代までは、まだギリギリ私がタウン誌の現役時代だったので、頑張っていろんな手でプロモーションしながら、何とか定着してきた。ただ、第三世代は「スタイル」や「センス」がカギになるので、たぶん古い人間の私には根本のところでズレがあると思っている。そこで、若者文化を扱うメディアや個人の出番なのである。

 今、第三世代のプロモーションをしておかないと、「讃岐うどんテーマパーク」の10年後、20年後は間違いなく、なし崩しにテンションが下がってしまうことになる。でも、今、讃岐うどんの情報発信をやっているのは、讃岐うどんマーケティングの「世代感」を認識してはいるが「第三世代」的なセンスがずれてきたおっさん(私)と、「第三世代」のセンスはあるはずだがトレーニングが足りない若者メディアや個人(『ナイスタウン』はここだ)と、お金と権威はあるが「世代感」の認識すらない方々(言えるか・笑)である。

 私もできるところまではやるが、それぞれのカテゴリーの皆さんにもぜひ、自分たちの持ち場で少し中期的なビジョンを持って、今何をすべきかをしっかり考えて頑張って欲しいと願っています。まあ偉そうに(笑)。
2016年4月6日(水)

 3年に1回開催されている瀬戸内国際芸術祭の春会期が3月20日に開幕して、地元マスコミがまたまた「大本営発表」の内容を流し続けています。先日の四国新聞の記事。

*****

(見出し)
瀬戸芸の春会期 12万4489人来場
2日時点、前回比17%増

(本文)
 瀬戸内国際芸術祭の実行委員会事務局は5日、春会期の来場者数の中間集計を発表した。先月20日の開幕から2週間(2日まで)の延べ来場者数は12万4489人で、3年前の同時期(10万6749人)と比べて約17%の増加。同事務局は「天候にも恵まれ、堅調に伸びている」としている。春会期は17日まで。

 会場別の来場者数をみると、トップは直島の3万105人。次いで沙弥島2万7381人、小豆島1万8284人、豊島1万4442人、高松港周辺1万1034人などの順。

 同芸術祭の来場者数は前回同様、各会場の基準施設計27カ所を訪れた人図の合計で算出している。

*****

 6年前の第1回の時から指摘しているのだが、相変わらず「何だそれは」という来場者数のカウントを続けている。もう、以前に詳しく書いたのと全く同じ話になるけど、いつまでも同じようなミスリード発表と報道が続いていて、それを誰も指摘しないから、私がしつこく正しておく(笑)。

 発表資料によると、春会期の「会場」と「施設数」、及び「来場者数をカウントしている基準施設数」は以下のようになっている(基準施設の詳細が報道されていなかったので、新聞に「前回同様27カ所」とあるから前回の数字をそのまま入れました)。

小豆島 39施設 そのうち来場者数をカウントしている基準施設は6カ所
直島  24施設 基準施設4カ所
豊島  14施設 基準施設4カ所
男木島 14施設 基準施設2カ所
女木島 13施設 基準施設2カ所
沙弥島 12施設 基準施設2カ所
犬島   8施設 基準施設2カ所
高松   6施設 基準施設2カ所
宇野   6施設 基準施設2カ所
大島   5施設 基準施設1カ所
広域   5施設 基準施設なし

合計  146施設 基準施設27カ所

 という内訳である(施設数は数え間違いがあるかもしれません)。そこで、瀬戸内芸術祭の来場者数は、
「146ある施設のうちの27カ所で、そこに来た来場者の数を数え、それを全部足して『延べ来場者数』として発表する」
というカウントをしているのである。

 何だ、その発表数字は。

 これはどういうことかというと、例えば東京ディズニーランドの「入園者数」というのは、当然、「ゲートを通って園内に入った人の数」ですね。それを、園内に40くらいあるアトラクションの中の人気アトラクション5カ所の前でそこに来た人の数を数え、5カ所に来た人の数を全部足して「東京ディズニーランドの延べ入園者数」と発表したら、誰が考えても「何だ、その発表数字は」と思うでしょうが。

 それに対し、「いや、これは園内5カ所に来た人の合計です」と言い訳すると、「じゃあ5で割れよ。合計数字を発表して何の意味があるんだ」と言われますよ。

 1人が入園して、人気アトラクション(来場者をカウントする基準施設)を5カ所回ったら、各カ所でそれぞれ「1人」とカウントされて、それを全部足したら、実際は1人しか入園してないのに「延べ5人」になる。時間がなくて3カ所だけ行ったとしても、1人しか入園してないのに「延べ3人」となる。じゃあ「3で割れよ」という話になる。だいたい、東京ディズニーランドだろうが瀬戸内国際芸術祭であろうが、わざわざ会場にまで来て、複数あるアトラクションの中の1つだけ見て帰る人なんかほとんどいないんだから。

 しかも、このカウント方法(方法として確立もされていないまやかしだと思う)でいくなら、来場者をカウントする基準施設の数を増やせばいくらでも「延べ人数」を増やすことができる。「合計数字をカウントした施設数で割って平均を出す」のなら意味があるけど、ただ足していくだけの基準施設数って、一体何の意味があるのか? そもそも、「27施設」という数自体に「なぜ27なのか? なぜ10ではいけないのか? なぜ50ではいけないのか?」等というロジカルな理由がないでしょう。

 繰り返すが、「146ある施設のうち、27カ所でそこに来た来場者の数を数え、それを全部足して『延べ来場者数』として発表する」というのは、誰が考えても「何だ、その発表数字は」なのである。

 ちなみに、そう考えると、記事にある「会場別の来場者数をみると、トップは直島の3万105人。次いで沙弥島2万7381人、小豆島1万8284人、豊島1万4442人、高松港周辺1万1034人などの順」という話も全く無意味であることがわかるでしょう。

*****

 もし、エリア全体の「入場者がカウントできるゲート」がない瀬戸内国際芸術祭の来場者数を正直ベースで出すなら、
@各島の港で、島に入ってきた人の数をカウントし(島だから、ほぼ「ゲート」状態でカウントできるでしょう。船会社が数字を持っているはずだし)、その総数から「日常の島民の出入り数」を引く(会期外の数字や島民人口から、かなり実数に近い推計が出るはずです)。
という方法が、普通に考えれば正攻法でしょう。

 あるいは、どうしても「瀬戸内国際芸術祭の作品を見に来た人の数」を出したいのなら、
A全施設で来場者数を数えて、その総数を「瀬戸内国際芸術祭・全施設の合計来場者数」として発表する。
B全施設でのカウントが不可能なら、今の「27施設」でも「10施設」でも「50施設」でもいいから、「瀬戸内国際芸術祭・○施設の合計来場者数」と発表する。
せめてそういうタイトルで発表すれば、まだ「正しい意味」は伝わってくる。

 あるいは、
Cもっと正しい状況を伝える数字にするには、さっき言ったように、「述べ来場者数」を「カウントした基準施設数」で割って「平均」を出して、「27カ所の基準施設に来た人の、1カ所あたりの平均人数」を発表すればよい。
 すると、これも県民や読者に実数がより伝わってくることになる。そういう「ファクトベースでより実態に近い数字を出そう」という方法をとらずに、ただ人数が多く見えるように「瀬戸内国際芸術祭の延べ来場者数」などという言い方で発表するから、人をミスリードしてしまうのである。

 普通、民間企業が自社の商品についてユーザーを惑わすような過大な表現をすると、JARO(日本広告審査機構)や公正取引委員会から注意が来たりペナルティを食らわされたりするのに、こういう「県民や読者をミスリードするような紛らわしい表現」は、特に地方にあってはフリーパス状態である(メディアと左翼は何でもオッケーなんですか?・笑)。

*****

 ちなみに、過去2回の瀬戸内国際芸術祭については、
●第1回(2010年) 延べ来場者数… 93万8246人
●第2回(2013年) 延べ来場者数…107万0368人
という数字だけが大きく報道され、この数字を見たほぼ全ての人が「2回目はさらに大きくなっている」という印象だけを植え付けられていると思う。実際、全国メディアも、ウィキペディアにもこの数字だけが歩いている。

 でも、県のホームページの中にある過去2回の瀬戸内国際芸術祭の報告書から、その他の基本数字を拾って実態に近いだろう計算をしてみると、何だかちょっと違うメッセージが出てくる。例えば一つ挙げてみましょうか?

<第1回>
●延べ来場者数…93万8246人
●来場者数をカウントした基準施設数…25施設
●来場者数をカウントした日数(開催期間)…105日
*来場者カウント回数…2625回(25施設×105日)

→基準施設25施設の、1施設当たりの1日平均来場者数
(93万8246人÷2625回)=約357.4人

<第2回>
●延べ来場者数…107万0368人
●来場者数をカウントした基準施設数…
 (春会期)27施設
 (夏会期)31施設
 (秋会期)34施設
●来場者数をカウントした日数(開催期間)…
 (春会期)33日
 (夏会期)44日
 (秋会期)31日
*来場者カウント回数…3309回
 (春会期) 891回(27施設×33日)
 (夏会期)1364回(31施設×44日)
 (秋会期)1054回(34施設×31日)

→基準施設25施設の、1施設当たりの1日平均来場者数
(107万0368人÷3309回)=約323.5人

 結果、基準施設1施設当たりの1日平均来場者数は、第2回の方が34人も減っている(9.5%減)という計算になるのですが(笑)。たぶん、第2回は会場となる島も増やして規模は拡大したけど、その分、1カ所あたりの来場者が減ったという見方が正しいのではないかと思いますが。

*****

 いずれにしろ、まあ、県は多額の税金を使って自分たちが主催する事業を正当化したいため、「使ったお金をなるべく大っぴらにせずに、成果はなるべく過大にアナウンスしたい」という“悪魔のささやき”に乗って「いいこと」だけを発表しようとする気持ちが出るのは、人の性(さが)としてわからないこともない。しかし、その悪習を断ち切って「正直ベース」で広報して県民に判断を問う、という改革を断行するのが「名将」だと思います。

 また、地元マスコミも、この狭い地域内でいろいろな生々しいしがらみもある上に、県から瀬戸内国際芸術祭に関する多額の広告収入を得ているから、まともな批評記事を書けないだろうというのは、私も地元で25年ぐらい広告業界とタウン誌業界で仕事をしてきたので、これも人の性としてはわからないでもない。でも、その悪習を断ち切って、ファクトベースでロジカルに行政チェックを行い、県民を健全な思考判断に導くのがジャーナリズムの根本的な責務だと思います。

 「なら、お前ならやれるのか」と言われれば、その気になればやれると思いますよ。要するに、上記の話をトップ同士で合意すればいいだけの話です。

 まず、県のトップと地元マスコミのトップが「香川県と香川県民を健全に豊かにしていくために、これから自己正当化のための装飾やごまかしをやめよう。行政は、いいと思えば正直ベースで必要な数字や事象を県民に堂々と公表してやってみればよい。地元マスコミはジャーナリズムの基本に返って、行政のやった結果をファクトベースでロジカルに検証して記事や直言で行政にフィードバックし、それを受けた行政は、悪いところがあれば一つずつ改めていけばよい」という健全な基本方針を合意すればよい。そこから、「批判的な記事を書いたから広告を出さない、行政情報を出さない」等という不健全な関係を少しずつ改善していけば、いろんなものがすごく建設的に進み始め、将来の県民のために絶対にいい方向に進み始めると思いますが(念のために言っておきますが、これ、理想論じゃなくて、プロセス論ですよ)。
2016年4月1日(金)

 授業の資料を作っていたら、県のホームページから「香川県民の国税の負担(納付)額」という資料が出てきた。国税の大半は「所得税」と「法人税」と「消費税」であるから、この数字は香川県民(個人、法人)の「経済的豊かさ」とかなり連動していると思うので、5年ごとに抜粋して並べてみますね。

1985年 2533億円 
1990年 3855億円
1995年 3811億円
2000年 3654億円
2005年 3777億円
2010年 3366億円
2015年 3090億円

*最高納付額 1991年 4159億円
*最低納付額 2009年 3036億円

 85年〜90年頃はバブルがどんどん膨らんでいた時期ですが(88年に瀬戸大橋開通)、それからわずか20年くらいの間に30%近く落ち込んでいる(!)ことがわかります。消費税は1994年に3%で始まって、97年に5%、2014年に8%に上がってきたというのに。

 つまり、大づかみに言うと、この20年間に行政が「地域活性化」とやらでやってきたほとんど全ての施策は、県民の経済的豊かさを増やすためには、まったくと言っていいほど効果がなかったと言わざるを得ないでしょう(民間企業は「地域活性化」なんか一番に掲げてないんだから)。何か、他に説明の付く理由とかカラクリとか、あるんですかね。県民挙げて巨額の脱税をやってるとか(笑)。

 「イベント」とか「ご当地商品開発」とか「机上の用語を並べた観光振興策」とか、ああいうのは要するに「地域経済活性化策」ではなくて「レクリエーション事業」だ、ということにいい加減に気付かないと(行政もマスコミも)、大局を見失って地域をミスリードすることになる。そんな当たり前のことが如実に表れている数字だと思うのですが。

 会社がどんどん利益を出せなくなって借金まみれになっている時に、役員会で「よし、局面を打開するために一般参加できる社内文化祭をやろう、社内運動会をやろう、会社のマスコットキャラクターを作ろう」などと提案したら、「アホか」言われて役員降ろされますよ、と(笑)。

 本日は以上。ここのところ、仕事がどんどんはかどっているので今日は短く更新回数だけ稼いでおくけど、とりあえず、新学期を迎える上原んちの小学生に「お前にこれが書けるか!」と胸を張っておこう(誰にライバル心を持ってるんや・笑)。
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